【読書ノート】「創刊男」の仕事術(29冊目) -MBAでは教えてくれない-
■概要
- 作者: くらたまなぶ
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
- 発売日: 2003/04
- メディア: 単行本
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新規事業の立ち上げのプロの書籍。
著者は、リクルートに在籍した20年間で立ち上がったサービス28個のうち、14個に携わった人物。
新規事業チームに新しく入った若手に
「マニュアルのようなものはないのか」と質問され、当時なかったことに気づかされたことをきっかけに書籍化したとのこと。
・市場調査とマーケティングの違い
・マーケティングとして人の気持ちを調査するときの方法
・ブレストの正しいやり方
・新規事業の立ち上げの流れ(ロマンを作る、そろばんをはじく、ジョーダンを言う)
・どうやって、人々の不をくみ上げるか
などに興味を持つ人は、一読の価値があるかもしれない。
■面白かったこと、興味深かったこと
①「生活者」として生活すること
サービス、商品には必ず、受け手と送り手がいる。普段の生活の中では、優れた受け手(生活者)であるべき。
受け手として、サービスや商品を調べて、選択して購入といった行動の中で、「自分の考えたこと」「感じたこと」を大事にすること。
例)
・自分はなんであの喫茶店よりこっちの喫茶店を好むのか。
・この値段は妥当か。
・なぜ、この商品は選ぶのが面倒なのか。
・なぜこの商品はちゃんと調べて購入し、この商品は一番売れているものを買うのか。
・もっとこうあったらいいのに、ここがいまいちだなど。
※裕福になると、「電車に乗らない」、「だれかに買い物をさせる」、「どっちがお得かまで考えずお金で解決する」など生活者から遠ざかり、「ユーザ感覚」が、鈍る。
「自分の行動や意思決定を言語化できること」は、一人の受け手(ユーザ)としての感覚を鋭くしておくことにつながる。
②マーケティングの方法について
マーケティングを行う際のヒアリングは、以下の順序で行う。
1、属性(プロフィールに関すること)について
2、体験について
・5W1Hで詳しく聞いていく。
例)「コーヒーは普段飲む」という答えに対しては、どこで?いつ?だれと?どのように?など
・単なる事実だから、相手も答えやすい
3、動機・背景について
・「なぜ?」で、動機・背景を問う。相手も考えていないこともあるため、じっくり聞く。
例)その銘柄を?なぜその時にいつも飲むの?
4、気持ち
相手が一連の行動をして、「どう思っているか」「どう感じているか」を聞き取る。それが「不」(もっとこうであったらいいのに、ここが不便、もったいないなど)
「事実を数字で把握すること」ではなく、受け手がどのように感じて、「なぜそれを選択しているか」を汲みとること。
「相手が気づいていないものを引き出していくことをしていた」というのが、本書を通して伝わってきた。
こうしたことは、AIは抽出できないし、アウトソーシングもしにくい、「価値のある仕事」なのだろう。
③新規事業の立ち上げ方
以下は、一番簡単な言葉で新規事業立ち上げの流れを表している。
※同じ意味のことを違う言葉でも、表現もできる。
1:ロマンを語る
「だれになにを届けるのか」、「それによってどのような不が解決されるのか」を明確にする。
●方法
・市場調査から仮説を立てる。
・仮説をもとにしながらヒアリング(知っている人(好きな人、嫌いな人、普通の人)、知らない人)を行う
・抽出された不を整理(図)する。
・俯瞰して、どのように不を解決するのかブレストする。
2:そろばんをはじく
1で練ったものが実際に採算がとれるのか、いつまでに採算をとるのかなどを数字で表現する。
3:じょーだんを言う
1,2を含めて、ユーモア・情熱を用いながら、協力者を説得する。
※ロマンだけでもダメ出し、数字だけでもダメ。また、市場調査・マーケティングを丸投げしても情熱が持てない。