【読書ノート】徹底的なスポーツの常識を変える。 マネー・ボール(93冊目)
■概要
マネー・ボール〔完全版〕 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
野球界ではドラフト指名において、これまでは「スカウトの属人的な目利き」と「わかりやすい指標」により、選手の将来性/有用性が決められていた。
上記の属人的な側面とチームの勝利に対する指標の再定義を行い、妥当性のある「データ」を新たに持ち込んだノンフィクション。
■面白かった事、気になった事
①「神聖な領域へ合理性を持ち込む難しさと面白さ」
本書で語られる「野球というゲーム」を有利に進める戦略は、革新的であり、面白い。
目に見えてわかりやすくイメージしやすい「打点」や「守備に置けるエラー」ではなく、「出塁率」を重視し、四球などで「塁に出ること」を最優先する。
その理由は、野球というゲームの特性を緻密に分析した結果である。野球というゲームは、3アウトをいかにとられないかが重要である。そのため、アウトになる確率が最も低い攻撃を続ける事、出塁率の最大化を行う事を優先するという。
このような戦略を徹底する事により、選手一人一人の年棒で大差を付けられても、しっかりチームとして結果を出し続けた。
その結果、映画化や書籍化をしている。
②投資に対する効果を突き詰めている。
本書で語られている以下のような戦略は、秀逸。
投資に対する効果を突き詰め、勝利を収めるチームはどこにどのくらい投資すれば良いか、そのときの観点はなにかをこれまでの過去のゲームを徹底分析する事により、導きだしている。スポーツにおけるクラブ運営でここまで合理的に運営されていることに驚きを感じる。
・投手よりも、打者にお金をかけたほうがよい。
・打者の善し悪しは、守備よりも攻撃に投資した方がよい。
・打者の善し悪しは、打点よりも、出塁率をみたほうがよい。
・安い選手を育成し、活躍させ移籍させた方が、収益観点で投資対効果がよい。
スポーツにおいて、勝利を収めるキーとなる指標は何かという観点において、膨大な過去実績を分析する事で、他スポーツも革新的な発見があるかもしれない。
マネー・ボール〔完全版〕 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)