【読書ノート】影響力の武器(27冊目)
■概要
- 作者: ロバート・B・チャルディーニ,社会行動研究会
- 出版社/メーカー: 誠信書房
- 発売日: 2014/07/10
- メディア: 単行本
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買いたくもないものを言葉巧みに買わされてしまうという社会心理学者の著者が、
研究の成果をまとめている。
・人はどのような特性を持つのか
・人は、どんな時に判断が鈍るのか
・それをどのように防ぐのか
など。
営業マン全般や営業を受けることが多く、またついつい買わされてしまう人、必見の著書。
書籍自体は、何十年も前に発売されているが、売れ続けている名著。
人が、社会や組織の中で生きる上で、無意識に行っている判断や考え方を利用してどのように相手の判断力を鈍らせ、相手の承諾を勝ち取りやすくするかを豊富な事例をもとに分析している。
一番印象に残っているのは「信頼のおける専門家の話」である。
相手が、「確信が持てない分野」にて、「信頼のおける専門家」という立場になるのが要求の承諾をとりやすい。
たしかに、自分もブラックボックスの分野で相手に信頼を置いている場合はよく吟味をせずに相手の提案をそのまま飲んでしまいそうである。
■気になったこと、おもしろかったこと
著書では、いくつかの判断力を鈍らせる人間の特徴について、具体的な事例を交えて述べられていますが、
いくつかメモります。
①社会的証明の原理
社会的証明の原理とは「人は確信がもてず、状況が曖昧な場合、より他の多数の人がとっている行動を基準に行動する。」
例)
・営業されている商品について詳しくない場合は、一番人気を選択する。
・銀行に群がる人をみて、勘違いしお金を引き出す人が殺到する。
・テレビに挿入される笑い声で笑いやすくなる(笑い声有り無しの実験で効果が実証されている)
普通の社会生活においては、悪意のある他者に出会わない限り、社会的証明の原理は、人の判断・意思決定を円滑にし、便利。
だが、中には以下のような営業方法として、社会的証明の原理を使用してくる場合もある。
・人気があるように見せて、営業してくる
・ほかの人の多くが同じ選択していることを強調するなどして営業してくる
※実際、私も保険の営業で、「ほかの人はみんな入っています」といった営業トークをされている。
②好意について
「人は好意を持った相手だと判断力が鈍る。好意を持った相手の要求は承諾しやすくなり、要求を拒否しにくい」
好意を生み出す要素としては、以下が挙げられている
・外見(裁判や面接などの実験にて証明されている。)
・類似性(相手の共通部分を見つけ、話を展開する営業マンには要注意。)
・お世辞(あまりにも意図的なものは、逆効果。)
・返報性の原理(見返りをもとめず、自分が一見損するような情報を相手に伝えるなど)
例)今日はこちらの安いほうの料理がおいしいや、今日はじつはこちらの安い商品のほうがお得など。
返報性の原理を利用し、好意を生み出し、目的のものを買わせるといった例は、防ぐことが難しく強力。
実際に以下のように営業をされたら、自分もその通りに料理を注文してしまいそう。
例)今日の一押しは、じつは○○といい、割安な料理を勧められる。そこで相手の信頼を得て、ワインやデザートは少し割高なものを勧めるというもの。
③一貫性の法則
人は、過去の自分の意思決定と一貫性を保つよう行動する。
一貫性を保とうとする理由としては、
・いちいち判断の理由を考えなくても済む。
・社会において一貫性のない人間の評価は低くなる
・一貫性のない人間は、信頼されずらい。
などがある。相手の信頼を勝ち取っていくには必要なことであり、これを他者に宣言することも大きな効果(一貫性を保とうと行動する)があるといわれている。
例)中国に捕虜にされたアメリカ人が共産主義に教化されていくときにも上記の一貫性の法則が使われた。
アメリカ人に少しでも共産主義が良いと思うところを書かせ、公に発表したり、読ませたりした。
営業の手法としては、
・週末はどうすごしているか?
・映画をどこでみてるか?どのくらい見ているか?
・なぜそんな映画が好きか?
・映画をそのくらい好きで、その頻度で見ているならこのようなカードに入るのがいいのでは?
※映画が好きな自分を宣言してしまった手前、それは断りづらい。
またこのほかにもイエスで続く質問を複数投げかけ、最後に本当に飲んでほしい要求を投げるという営業手段もあるようである。