【読書ノート】脳の仕組みと運動について解説している良書 「一流の頭脳」(78冊目)
■概要
1万2千年前に他の哺乳類と異なる進化を遂げ、発達した現在の人類。
脳の発達という側面においては、テクノロジーの発達により、生活習慣が大きく変わったにもかかわらず、あまり大きく変化していない。
具体的には、狩猟生活や農耕生活を想定した上で、生存確率を高めるために、脳は設計されている。
そのため、狩猟や移動において一定時間以上の運動を行うと、脳内の興奮物質が分泌され、集中力が高まる(選択の選択)、判断能力、記憶力が直後数時間にわたって向上するという。
上記のように、人類の誕生から脳の設計をもとに仕組みを解説している点が、非常に面白く示唆に富んでいる。
主張も、わかりやすくシンプル。
脳の機能を最大化したい、集中力をあげたい、精神を安定させたいなら、迷わず運動(20分以上の有酸素運動を週3回以上)をすることを進めている。
■おもしろかったこと
①脳の老化を防ぐ方法
「優れた脳とは、各領域の制御がスムーズで各領域の連携が取れていることである。」
たとえば、「ピアノを弾く」という行為だけでも、脳内では複数の領域が複雑に連携し、一つの判断/行動を行っている。
①視覚から視神経へ電気信号が伝わる
②後頭葉の一次視覚野という領域に情報が運ばれる
③聴覚資質が音の情報を処理
④前頭葉が体を全体制御しながら、手を動かし、鍵盤を打つ等
たとえば、脳の領域連携が強いと、以下のようなことが特徴がでるという。
・飲酒や喫煙に対する自制心が強い
・教育水準が高い
・集中力がある
・記憶緑が高い
反対に、脳の連携が弱いと
・かっとなりやすい
・飲酒や喫煙への依存度が高い
・短期記憶が弱い
上記の脳の連携を強めるためには、ランニング(有酸素運動)を20分以上行うと、GAVA(ガンマアミノ酸)が本来担っている「脳の変化が起こらないように抑制している機能」が弱まり、脳の構造が変化しやすい土台を醸成し、脳内の連携が強化できる可能性が高まる。
②脳への運動の効用
a.運動をする事によって、ストレス耐性が強まる。
通常、人が強いストレスを感じるような危険/脅威を感じるとストレスホルモン:コルチゾールが分泌される。
運動を行うと、体への負荷がかかるため、同じようにコルチゾールの分泌量が増加する。
一時的にコルチゾールは増加するが、運動前より低い基準になり、運動後は分泌自体が抑制されるようになる。
つまり、運動する事によってストレスに対して過剰に体が反応しないようにすることが可能なのである。
b.運動をする事によって、集中力/抽象的思考/論理的思考/計画力等が向上する。
運動をする事によって、脳内に脳内の興奮物質であるドーパミンが放出されるという。
ドーパミン放出により、報酬系の中枢にある側坐核が刺激され、今行っている行動は価値があるという判断をするため、行動に対して、集中することができるという。
また、抽象的思考/論理的思考/長期的目標を立て達成する等の高度な思考/判断を担う「前頭葉」,「前頭前皮質」の活動も活発になることが証明されている。
たしかにこれまでの経験として、仕事終わりや土日に運動をした方が「仕事や勉強がはかどる」、または「やる気が満ちる」というのは、実体験もあり、納得感がある。
※ちなみにADHD等の集中できない人達は、ドーパミンが作用する閾値が高い場合が多いとのこと。ドーパミンの閾値が高く、他の情報を取捨選択を行うということを継続できない。
c.運動をする事によって、うつ病にも効果がある。
現在、鬱病の原因は脳内の神経伝達物質である「ドーパミン」、「セロトニン」、「ノルアドレナリン」のいずれかのバランスがくずれる/不足している事によって、発生しているといわれている。
薬による鬱病の治療は、副作用も大きく、また特定物質が不足して起きるような単純な病気ではないため、完治する事も難しいのが現状である。
ただ、運動をする事によって、上記の神経伝達物質のそれぞれが量が増える事が報告され、実際の治療においても、薬と同等以上の結果が出ていることも判明している。
最後に
仕事をし始めてから、運動をする効用を言語化できていなかったが、感じる事が多かった。
なんとなく頭がすっきりする、体は疲れたが前向きに明日から働けそう等。
実際に脳の中で、運動によりどのような変化が起き、どんなポジティブなことが起きているのかを知るのは非常に面白かった。
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