【読書ノート】働かないアリに意義がある(46冊目)
■概要
「働きアリ」の生態について書いた書籍。
・なんで働くアリと働かないアリがいるのか。
・「自分の遺伝子をより多く残す」という本能と「生涯にわたり、子を産むことができない働きアリ」は、矛盾しないのか
等々の疑問が解ける書籍。
「へー、おもしろっ」という瞬間、発見が多い。
例えば、
アリのコロニーにも、フリーライダーがいて、その割合が大きくなるとコロニーが破滅するらしい。
基本的には、「哺乳瓶類」と「虫の世界」なんだけど、
生物としては共通している部分があって、なんか深いような気もしてくる。
■面白かったこと、気になったこと
①働きアリと働かないアリがいる理由
結論から言うと、「働かないアリがいた方が、コロニーがより長く生存できるため」、らしい。
全員が「働きアリ」であるコロニーは、全員が一生懸命働くため、非常事態の仕事が降り掛かってきたときの対応ができない。
一方で、「働かないアリ」がいるコロニーは余剰の労働力があるため、
最前線で働いてるアリが死んだ時、予想外の仕事が発生したときに、柔軟に対応できるとのこと。
一見、不合理にみえるが、最適化された結果であることが面白い。
ちなみに、2割の「働かないアリ」は、本当に一生を通して働かないらしい。笑
これは人間社会でも適用できるのか謎。
②どうやって働かないアリを作り出しているのか
アリの脳は複雑な判断ができないため、仕事量を判断して仕事をするといった判断はできない。
ではどうやって自分が働くタイミングを判断してるのか。
これは、遺伝子レベルでそれぞれの個体で「反応閾値」で判断している。
「反応閾値」とは、たとえば、
1つのゴミがある状態で働き始めるアリもいれば、
2つ以上ゴミが無いと働かないアリもいるし、
3つ以上ゴミがないと働かないアリもいる。
「一つの事象に対し、反応する閾値が個体ごとに異なる」ということ。
それぞれの個体ごとに、仕事を始める基準を持っているため、
「常に働いているアリ」と閾値に届かなければ、働かないアリ、いわゆる「働かないアリ」が存在するというわけ。
ちなみに、この反応閾値がさまざまな個体がいるコロニーのほうが生存確率が高い。
システム化された指揮命令なんか必要なくて、
反応閾値だけで一つの社会をコントロールしているのが神秘的でおもしろい。
③一つの社会には一定の確率で裏切り者が出現する。
たとえば、虫の世界でも女王しか卵を産んではいけないはずなのに、
自分の子供を生もうとする虫が現れるという。
他の個体が監視しているため、もちろんそれを阻止する。
しかし、この裏切り者が一定数に達すると、コロニーは崩壊する。
これは、人間という一つの個体にの中にも、発生するという。
一つ一つの細胞レベルで見ると、虫の社会でいう裏切り者は、人間でいうところのがんであるとのこと。
- 作者: 長谷川英祐
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2016/06/14
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