【読書ノート】超一流になるのは才能か努力か?(26 冊目)
■概要
人がある分野で上達していく過程は、普遍的なプロセスがある。
どんな分野でも一流と言われる域まで達するには、1万時間が必要であるとしたのが、
- 作者: マルコム・グラッドウェル,勝間和代
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2009/05/13
- メディア: ハードカバー
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だが、一万時間の法則として有名な本に対する、アンサーソングのような書籍が以下。
- 作者: アンダースエリクソン,ロバートプール,Anders Ericsson,Robert Pool,土方奈美
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2016/07/29
- メディア: 単行本
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それに対し、真っ向から一万時間の法則を否定するわけではなく、より具体的に
「人が他の人々より圧倒的な成果をだすまでに、どのような思考プロセス・練習量をこなしていっているのか」を詰めた本であった。
筆者は、先天的な才能のみによりある分野のプロとなる事例については、一律否定的である。
主張としては、「限界的練習」をこなすことにより、身体・脳の適応性が働き、訓練を行っていない人々で考えられないような能力を得るとしている。
例)「トレーニングにより絶対音感を修得した事例」、「ロンドンのタクシー運転手の海馬の成長した事例」、「音楽大学のバイオリストの実力と練習量の相関関係があった事例」など。
こういう脳の可塑性に対し、肯定的に論じている書籍を読むとやる気がでますね。
■気になったこと、おもしろかったこと
①ある分野で上達する人と上達しない人の違い
著書では、バイオリストを例に、課題の曲に対し、一定の時間でどれだけ向上できるか(自分の間違いを修正できるか)という実験を行っている。
結論として差が出た要因は、心的イメージ(本来は、◯◯であるべき)が具体的に無い生徒は、問題の把握が正確でなく、問題の修正が少ない傾向にあったという。
これは汎用的という印象。たとえば、プログラミング。「ほんとうはこういう風にかくのが理想」というのを認識していないと、
「自分のソースに問題がある」、「改善点があること」に気がつかない。
対策としては、良い教師・見本をみつけ、この分野ではこうあるべきじゃないかを具体的にしておくこと。
②1万時間(まとまった練習量が)が有効となりやすい前提
「1秒簡に1つ数字を覚えていく」という実験にて、どれだけ人は短気記憶を伸ばせるか、長期記憶に移せるかという実験に得られた知見は以下。
※常人は7−8くらいが平均。ただし訓練すると、符号化とグルーピングにより数十桁覚えられるという。
a.具体的な目標があること
特に長期的な目標に対し、細かくステップ化された目標があること。
b.フィードバックがあること(自分の成果を正確に評価できること)
「なにが成功要因だったか」、「なぜ失敗したか」、「どこが失敗要因か」、「どうやったら改善できるか」を第三者が指摘してくれる、または自分で把握できる状態を作ること。
c.負荷がかかっている練習であること
今の実力ではぎりぎりできないけど、不可能ではない目標をもとにした練習。負荷がかかっているからこそ、身体・脳の適応性が発揮される
d.「できなかったこと」ができるようになることに対し、喜びを感じる趣向があること
外発的同期付けではなかなか継続しづらい。継続的に取り組み続けるには、内発的動機付けとして、上記が重要。
③経験年数=実力ではない
医師を事例に経験年数=実力ではないを主張している。
理由としては、若い医師の方が最新の医療技術をもとに診断・手術をしているため。
経験豊富にみえても、現場に入ったときから医療における技術をアップデートしていないただ日々の業務をこなしているような医師の場合は、若い医師の方が治療の質は高いという。
④圧倒的な戦力を誇ったトップガンの話
トップガンとは、
アメリカ海軍のNSWC(海軍打撃作戦センター)傘下であるNSAWC(海軍打撃・航空作戦センター)のN7部門の事。戦闘機パイロットのトップを養成するアメリカ合衆国海軍戦闘機戦術教育(United States Navy Strike Fighter Tactics Instructor:SFTI)プログラムを行うアグレッサー部隊である。通称トップガン(TOP GUN)で有名。
ここでは、一流の飛行士から訓練後フィードバックがあり、「なぜあのときあの行動をとったのか」、「他は考えられなかったのか」、「負けた要因はなにか」、「勝つためには何が必要だったか」を詰められるという。
詰められた飛行士は、訓練したら終わりではなく、的確にアドバイスをも修正する機会を持つ。
面白いと思ったのが、しだいに訓練生は上官に言われることを内面化がはじまる。上官に詰められる前に、またはいなくとも自問自答し、自走しはじめるという。
これも他の分野にも汎用的な印象。フィードバックを内面かしていくことで、一人でも上達していけるようにする。